光照射によって強磁性体表面から脱離した原子のスピン移行量を測定し、脱離メカニズムを解明
光照射によって強磁性体表面から脱離した原子の
スピン移行量を測定し、脱離メカニズムを解明
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国立大学法人bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@大学院工学研究院部門の浅川寛太助教と畠山温教授、東京大学生産技術研究所の河内泰三技術専門職員、福谷克之教授らの研究グループでは、ルビジウム(Rb)原子が吸着した強磁性体Fe3O4表面に紫外光を照射することで脱離したRb原子に対し、独自に開発した手法を用いてスピン移行量の測定に成功し、脱離メカニズムの一端を解明しました。
本研究で開発した手法は、触媒など表面への吸着を用いた技術の発展に貢献すると期待されます。
報道解禁日:9月22日 18時00分(日本時間)
論文タイトル:Optical and spin?selective time?of?flight measurement of light?induced desorption of Rb from Fe3O4 surfaces
URL:https://doi.org/10.1038/s41598-023-41937-1?
背景
固体表面では、気体原子?分子が表面に結合する現象(吸着)やその逆過程である脱離などの表面特有の現象が起きます。これらの現象は触媒やガスセンサーなどの技術に応用されますが、そのメカニズムには、吸着する物質(吸着子)と固体表面との間の電子の移動が深く関わっています。電子は電荷とスピン(注1)という二つの性質を持ち、吸着子と固体との間で電子が移動すると電荷の移動とスピンの移行も同時に起きます。電荷の移動を検出する方法が数多く存在する一方、スピンの移行を検出することは困難とされています。
スピン移行は、コバルト(Co)へのアルカリ金属原子吸着による触媒促進効果など、産業上重要な現象に関係しており、その検出手法の開発が課題となっていました。
研究体制
本研究は、bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@大学院工学研究院先端物理工学部門の浅川寛太助教と畠山温教授、大学院工学府化学物理工学専攻の田邊直樹氏、東京大学生産技術研究所の福谷克之教授、河内泰三技術専門職員による研究グループによって実施されました。
なお、本研究は、JSPS科研費 JP21K13864および公益財団法人 住友財団 基礎科学研究助成、公益財団法人 マツダ財団 マツダ研究助成の助成を受けて実施されました。
研究成果
本研究では、図1に示すような装置を用いて、表面に吸着したRb原子を光誘起脱離(注2)させ、光の吸収を用いて脱離した原子のスピン状態を測定することで、脱離に伴う表面-吸着子間のスピン移行を検出するという独自の手法を開発しました。この手法では、試料に紫外光を照射して吸着原子を脱離させ、脱離したRb原子に、Rb原子が共鳴する波長の光(プローブ光)を照射し、Rb原子によるプローブ光の吸収強度をフォトダイオードで測定することで、脱離原子を検出します。また、プローブ光には円偏光を用い、その向きを切り替えながらプローブ光吸収強度を測ることで、脱離したRb原子のスピン状態を測定することができます。紫外光源には高強度パルスレーザーを用いることで、脱離原子密度を高め、微小なスピン移行を検出することを可能にしました。
本研究では、この手法をRb原子が吸着したFe3O4表面に適用することで、その有効性を実証しました。その結果、Fe3O4からのRbの脱離は、ある一定の被覆率以下の領域では起きず、また、脱離したRbの並進速度は被覆率に依存することが明らかになりました。また、光誘起脱離に伴うFe3O4とRbの間のスピン移行の大きさは、検出感度以下であることも明らかになりました。
これらの結果は、Rbの光誘起脱離は、Rbが表面に2層以上吸着している多層吸着領域でのみ起きることを示しています。またこの結果は、本研究で開発したスピン移行検出手法が、固体表面と吸着子との間の相互作用を解明することに役立つということを意味しています。
今後の展開
本研究成果により、 光誘起脱離に伴う表面-吸着子間のスピン移行を検出する手法が確立されました。これにより、Coへのアルカリ金属原子吸着による触媒促進効果などのスピン移行が関係する現象の解明が進み、高効率触媒の開発などに貢献すると期待されます。
用語解説
:
注1)スピン
電子や原子などの粒子が持つ、磁石のような性質。古典的には粒子の自転運動のようなものとして解釈される。
注2)光誘起脱離
光照射によって固体表面から原子や分子などが脱離する現象。
◆研究に関する問い合わせ◆
bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@大学院工学研究院
先端物理工学部門 助教
浅川 寛太(あさかわ かんた)
TEL/FAX:042-388-7554
E-mail:asakawa(ここに@を入れてください)go.jskrtf.com
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