過去70年間の日本の木質ボードの炭素貯蔵量を解明

過去70年間の日本の木質ボードの炭素貯蔵量を解明

 国立大学法人bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@と日本繊維板工業会の共同研究チームは、木質ボードの炭素貯蔵量を推定する方法を検証し、過去70年間に日本で利用された木質ボードの炭素貯蔵量を明らかにしました。この成果により、人間社会で木材資源を循環利用する木質ボードが気候変動対策にどの程度貢献しているのかが見えるようになりました。

本研究成果は、Scientific Reports(6月17日付)に掲載されました。
論文タイトル:Carbon stocks of particle board and fiberboard in Japan
URL:https://www.nature.com/articles/s41598-023-37132-x#citeas

背景
 2015年にパリ協定が採択され、世界全体で温室効果ガスの排出量を減らし吸収量を増やすことが重要課題となっています。木材は森林から伐採後も炭素貯蔵機能(注1)を持つため、その有効活用は気候変動対策として重要な方策となります。特に木材製品使用後の解体材?廃材を繰り返し利用して製造される木質ボード(図1)は、炭素貯蔵期間をさらに延長する機能を持ち、この期間は森林が成長し炭素貯蔵を増やす時間としても役立ちます。しかし、世界的に木質ボードの炭素貯蔵量や気候変動対策への貢献の大きさはほとんど検討されていませんでした。そこで、本研究では、木質ボードの炭素貯蔵量を推定する方法を検証し、過去70年間に日本で利用された木質ボードの炭素貯蔵量を解明しました。

研究体制
 本研究は、bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@大学院農学研究院自然環境保全学部門の加用千裕教授、平原俊助教、bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@大学院連合農学研究科の三條瑚都子(博士課程学生)、佐藤惟生(博士課程学生)、劉夢媛(博士課程学生)、ガジャマダ大学森林学部のGianova Vierry Prasetyadi研究員、日本繊維板工業会の研究グループにより行われました。日本繊維板工業会が木質ボード利用量のデータ(図2)を提供し、bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@?ガジャマダ大学が炭素貯蔵量の推定方法の検証と解析を行いました。

研究成果
 本研究で独自に開発した方法を用いて推定したところ、1953~2022年の期間中に日本の木質ボード(パーティクルボード?ファイバーボード)の炭素貯蔵量は増加し続け、最新の2022年の炭素貯蔵量は約22百万炭素トン(t-C)(二酸化炭素量換算では約80百万t-CO?)であることが分かりました(図3)。その4割は解体材?廃材を原料とする木質ボードで、木材製品として炭素貯蔵機能を発揮した後さらに木質ボードとして炭素貯蔵期間の延長に役立っていることが明らかになりました。2021~2022年の1年間に木質ボードの炭素貯蔵量は約42万t-C(約150万t-CO?)増加しており、日本で利用されている木材製品全体の炭素貯蔵量(注2)は減少しているのに対し、木質ボードは炭素貯蔵量を増加させることに貢献していることが分かりました。気候変動に関する政府間パネル(IPCC)のガイドライン(注3)が提示している暫定方法は木質ボードの半減期(注4)を25年と仮定していますが、日本の木質ボードの主な利用先である木造建築物の半減期は38~63年(注5)と長く、IPCCの方法を用いると過小推定となることも確認されました。推定精度を高めるためには日本の木質ボードの実態に合った独自の方法を用いることが重要です。木質ボードの炭素貯蔵量は他の国や地域ではまだ詳細に検討されておらず、日本の研究成果は世界の先進事例となります。

今後の展開
bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@:本研究によって、日本全体の木質ボードの炭素貯蔵量を明らかにすることができました。今後は建築物以外の用途に利用されている木質ボードの半減期を解明し、さらに推定精度を高め、解体材?廃材などのリサイクル材を有効利用する木質ボードの気候変動緩和効果を解明していきます。本研究で提示した推定方法を多くの企業や行政で活用し、木質ボードを含めた木材製品の炭素貯蔵量の正確な把握を通じて木材の有効活用を支援することで脱炭素社会の実現に貢献します。

日本繊維板工業会:日本繊維板工業会は、木材の高度利用の一環として木質ボード産業が本格化した1953年より70年にわたり持続可能な社会に貢献することを目的に事業活動を行ってまいりました。本研究により日本における木質ボードによる炭素貯蔵量を把握することが可能になり、木質ボードが木材製品全体の炭素貯蔵量の減少を緩和していることが明らかになりました。今後も学会及び研究機関や関連団体との連携を深め、脱炭素社会に実現に向け関係省庁、関係機関への提言及び協力を行ってまいります。

用語解説
注1)森林は樹木の成長過程で大気中から炭素(二酸化炭素)を吸収固定します。森林から伐採後の木材も炭素を貯蔵し続けるため、人間社会での木材利用は炭素の貯蔵庫として機能しています。
注2)自国で利用される伐採木材製品(Harvested Wood Products: HWP)を対象とする蓄積変化法によって推定された日本のHWPの炭素貯蔵量は減少傾向にあります。
Kayo, C., Kalt, G. et al. The default methods in the 2019 Refinement drastically reduce estimates of global carbon sinks of harvested wood products. Carbon Balance Manage. 16, 37 (2021). https://doi.org/10.1186/s13021-021-00200-8.
注3)IPCCとはIntergovernmental Panel on Climate Changeの略称です。
IPCCが提示している温室効果ガスインベントリのガイドライン:
https://www.ipcc-nggip.iges.or.jp/public/2019rf/index.html(2019).
注4)半減期とは木質ボードの残存率が50%となる経過年数を表します。例えば、ある年に利用された100 m?の木質ボードが徐々に廃棄され50 m?まで減った時の経過年数を示します。一般的には木質ボードの平均寿命と定義されます。
注5)日本の木造建築物の半減期は38年(~1964年)、56年(1965~1996年)、63年(1997年~)と推定されています。
Kayo, C. & Tonosaki, M. Lifetimes of buildings in Japan. Resour. Conserv. Recycl. 185, 106504 (2022). https://doi.org/10.1016/j.resconrec.2022.106504.

図1 木質ボード:パーティクルボードとファイバーボード(ハードボード、ミディアムデンシティファイバーボード、インシュレーションボード)
図2 日本の木質ボード利用量(販売量?輸入量)と原材料に占める解体材?廃材率
「PB」:パーティクルボード、「HB」:ハードボード、「MDF」:ミディアムデンシティファイバーボード、「IB」:インシュレーションボード。木質ボード利用量は炭素量に換算して表示している
図3 日本の木質ボードの炭素貯蔵量(左軸)と年変化量(右軸)
「PB」:パーティクルボード、「HB」:ハードボード、「MDF」:ミディアムデンシティファイバーボード、「IB」:インシュレーションボード、「解体材?廃材由来」:解体材?廃材由来の木質ボードの炭素貯蔵量、「年変化」:炭素貯蔵量の年変化(翌年初頭の炭素貯蔵量-当年初頭の炭素貯蔵量)。

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◆研究に関する問い合わせ◆
bet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@大学院農学研究院
自然環境保全学部門 教授
加用 千裕(かよう ちひろ)
 TEL/FAX:042-367-5729
 E-mail:kayoc(ここに@を入れてください)cc.jskrtf.com

◆日本繊維板工業会提供データに関する問い合わせ◆
日本繊維板工業会 専務理事
坂田 徹 (さかた とおる)
 E-mail:jfpma(ここに@を入れてください)jfpma.sakura.ne.jp

関連リンク(別ウィンドウで開きます)

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