課題講演
課題講演の実施要領(一部変更の可能性もあります)
(1) 課題講演は一般講演と並行して行われます。
(2) 課題講演の企画希望者 (コンビーナー) は,課題講演の題目?趣旨(企画内容),代表者の氏名?所属?連絡先 (電話番号,電子メールアドレス) を,5月24日 (月)
~ 6月18日 (金) の期間中に,JSLIM85実行委員 (rikusui85@gmail.com) に電子メールでご連絡下さい。電子メールタイトルには「課題講演申込」と記載願います。
(3) 課題講演の応募が多数の場合は,大会企画委員会とJSLIM85実行委員会とで検討し,採択を決定することがありますので,あらかじめご了承下さい。
(4) 課題講演の題目および内容は,決定次第,大会HPに掲載し,講演者非公募の場合を除いて課題講演の講演者 (発表者) を募集します。
(5) 課題講演での講演を希望される方は,6月21日 (月) ~ 7月23日 (金) の期間中に,直接コンビーナーに連絡を取って,課題講演での講演の承諾をえるようにしてください。
(6) コンビーナーより課題講演に採択された講演者は,ご自身で,大会参加&発表申込ページ(WEB)より,大会参加&発表申込みを行って下さい。
(7) コンビーナーは,大会実行委員会から送付された講演者一覧を発表順にとりまとめ,7月26日 (月) ~ 7月30日 (金) の期間中に大会企画受付
(rikusui85@gmail.com) に電子メール添付にて送付して下さい。
課題講演一覧
(T-1) 「栄養塩負荷量と漁業生産の関係:水質総量規制は漁業生産の減少要因か?」
コンビーナー: 伴 修平(滋賀県立大学?環境科学部)
連絡先:(Email)ban (at) ses.usp.ac.jp, (Tel) 0749-28-8307
趣旨:わが国の湖沼および沿岸海洋では、1980年代以降、窒素?リンの排出規制(人為的貧栄養化)によって富栄養化は改善されたが、一方で、貧栄養化による漁獲量の低下が危惧されている。いくつかの水域では漁獲量と栄養塩濃度の間に正の相関関係が認められているが、定量的な研究はほとんど存在せず、栄養塩負荷と漁獲量の間に存在する間接効果を考慮した研究はない。リン負荷の変動が植物プランクトン一次生産に直接影響を与えることは明らかである。しかし、一段上の栄養段階である動物プランクトン生産、さらにその上の漁業生産にどれ程影響を与えるかは、充分に検討する余地がある。琵琶湖では1990年以降、魚類、特にコアユの漁獲量は減少傾向にあり、貧栄養化の影響が懸念されているが、主な餌生物である動物プランクトン生物量は上昇傾向である。我々は、2018?2020年に科研費基盤Aにおいて、琵琶湖を例に、漁獲量の減少が人為的貧栄養化に伴う一次生産の減少に起因するのか確かめた。本研究では、リン酸ナノモル測定およびリン酸酸素安定同位体測定などの最新技術を用いることによって、湖内でのリン酸塩濃度の詳細な時空間分布と植物プランクトン生産の関係を明らかにし、また、これまで不明であった地下水と沿岸堆積物間隙水からのリン供給を推定した。そして、過去40年間におよぶ長期保存標本と現場実験の併用で動物プランクトン群集の生産量を推定し、コアユ漁獲量の変動と比較した。本課題講演では、これらの研究成果を報告すると共に、栄養塩負荷と漁業生産について議論する場を提供したい。他水域などからの事例報告も大いに歓迎する。
(T-2) 「火山山麓河川の陸水環境」
コンビーナー:谷口智雅(三重大学)?野崎健太郎(椙山女学園大学)
連絡先:(Email)totaniguchi (at) human.mie-u.ac.jp (谷口),(Tel)059-231-9157
趣旨:火山地域の水の特徴を見ると、新しい火山は透水性が良く、地下に水が浸透するため、地表水の無い水無川や浸透した地下水が山麓の豊富な水資源をもたらす。このような河川は枯渇しにくく、火山山麓の湧水やそこから生まれた河川の沿岸は、渇水流量も多くなり、水の利用に都合の良い地域となる。その一方で、河川が強酸性水であったり、温泉や火山性ガスの噴出が河川水質や水温、生態環境にも大きな影響を与える現象も見られる。さらに、火山活動にともなう大規模な地形変状や水質改変などの攪乱は陸水環境に対して大きなインパクトを与えるものにもなる。日本には111の火山があり、それぞれの地域の陸水環境とともに風土が存在していると見られる。このため、本課題講演では、生態的?化学的?地理的など様々な分野の研究者の知見を共有することによって、火山山麓河川の陸水環境の理解を深めるとともに、日本を代表する自然景観の一つである火山地域の水や生物、さらには陸水と人々の関わりについての情報交換の場となることを目指したい。
(T-3) 「河川中流域における生物生産性の機構解明と河川管理への応用」
コンビーナー:平林公男(信州大学?繊維学部)
連絡先:(Email)kimio (at) shinshu-u.ac.jp (Tel)0268-21-5356
趣旨: 生態系を評価するための手段は,「密度や構成種などの群集構造の評価(structural measures)」と「物質循環やエネルギ-フローなどの機能的評価(functional measures)」を組み合わせた方法が推奨されており,「構造的評価」と「機能的評価」の両者をカバーする方法の一つに二次生産の分析がある(Buffagani and Comin, 2000;Dolbeth, 2012).また生物生産は,生物相互作用や環境条件などの影響を受けるため,環境変化や人間の活動からの影響を評価する手段ともなり,重要な指標の一つだと報告されている(Buffagani and Comin, 2000;Dolbeth, 2012).しかし,我が国の河川においては,「物質循環と生物生産性」について,1970年代にJIBPにより実施された2河川(奈良県の吉野川と北海道の遊楽部川)の総合研究調査成果が主にあるのみで,その後の研究は大きく進展していない. 近年,河川生態系を取り巻く環境は大きく変化しており,魚類現存量の減少やコクチバス等の肉食性外来魚の侵入などにより,1970年代とは異なる「物質循環と生物生産パターン」の形成が推測される.これらのことから,再度「物質循環と生物生産性」に関する研究を進める必要性が出てきた.近年の観測?分析や数値計算技術の進展?普及に伴い,一次生産を中心とした調査?研究には進捗がみられ,「物質循環と生物生産性」の実態解明の実現性は高くなっている.しかし,実河川における二次生産までを含めた生物生産性の実態把握とそのモデル化は未だ不十分であり,魚類現存量の減少をはじめとする水圏生産性の低下などの原因解明や,これら問題を解決するための河川管理上の留意点等の把握には至っていない.本課題講演では,河川中流域の瀬?淵ユニットにおいて,観測技術,分析技術を駆使し,物理環境,一次生産及び二次生産を一連の系としてとらえる「二次生産系」の実態を把握し,その量的な関係を明らかにすることを第一の目的とした.また,野外において直接観測できない項目や,推測が難しい項目については,近年,著しい進歩が認められる数値モデルを駆使し,全体像の把握を行った事例について報告する.河川生態系は時間的な変動が大きいため,季節や年を通じた野外でのデータ観測を継続するとともに,複数の手法を用いて生物生産力を推定する試みは極めて重要である.応用例として,推定したデータを元にして,開発したモデルを用いて過去からの生物生産性の変遷を再現し,二次生産に関する課題の原因推定と二次生産系を良好に保つための河川管理基準(「生産性管理基準」)も提案してみたい.他河川などからの事例報告があれば情報を共有し,併せて議論をしていきたいと思う.