◆研究室が重視している三段階の研究目的と方針
【ステップ1】理論研究:社会経済システムの思想的分析
環境破壊の問題は、経済成長を主目的とするがゆえに環境への配慮が行き届かなくなる社会経済システムに起因しています。このシステムは、誕生からまだ500年ほどしかたっていないのですが、その成立過程には哲学がおおきく関わっています(コラム「①近代哲学の功と罪」参照)。
環境哲学研究室では、公害問題?南北問題?公共事業による環境破壊といった現実の問題を事例とし、「環境哲学とは」のページであげた哲学(機械論的自然観?二元論?自然権思想)にくわえ、社会システム論?帝国主義論などの知見も参照しながら、環境破壊をもたらす社会経済システムがどのように成立してきたのか、その思想的背景を探っています。
そのうえで、そうした思想のうち、おかしな部分は見直し、よい部分は生かすかたちで、持続可能なよりよい社会に向けた有益な視座を提起できないか、日々探っています。
《具体的な研究》
?この点における最新の研究が「研究実績」→「刊行著書」→単著書3の『開発と〈農〉の哲学』(2023年、はるか書房)となります。
【ステップ2】未来社会のデザイン
しかし、環境破壊をもたらす社会経済システムについての思想的背景の理解が深まったとしても、環境破壊の問題は解決しません。環境破壊を食い止めうるような、持続可能な社会をデザインしていく必要があります。
このような問題意識から、環境哲学研究室では、ガバナンス論、民主主義論(熟議民主主義?合意形成論)、公共哲学といった諸思想に学びつつ、地域で現実に起こっている問題も同時に調査しながら、未来社会の形成に必要とされる思想はどんなものか、どんな未来社会のデザインが必要になってくるのか、考えています。
《具体的な研究》
?議論の〈場〉をつくる思想と実践→「研究Ⅰ」参照
?まちづくり、地域おこしの思想と実践→「研究Ⅱ」参照
【ステップ3】未来社会の基盤となりうる思想の探求
未来社会をデザインするには、実際の現場で生まれている新たな知見や考えかたと、理論上の知見とを照らし合わせながら、未来社会にあった哲学?思想を探求していく必要があります。
そこで、第3に、環境哲学研究室では、どのような思想があれば、人間のつくる社会環境と自然環境との良好な循環関係を築いていけるか探究しています。このとき、「必要とされる思想は多様である」、「必要とされる思想はケースによって変わってくる」であろうという2つの視点を大前提として、考察を進めています。
《具体的な研究内容》
?共生の思想:循環型の地域のありかた、人間と自然との共生、対話の作法
?〈農〉の哲学:人間が〈農〉をすることの意味、猟師の哲学→「研究Ⅲ」参照
(2024年3月15日改訂)