LEVは1kg級の小型探査ローバで、小型月着陸実証機 SLIMのオプションペイロードとして開発されました。 SLIMプロジェクトの初期にISASや中央大國井研究室らで検討されていたホッピング型月面ローバを10年近くの歳月を経て実現したものです。 LEV(LEV-1)は跳躍機能を有し、月面の不整地を飛び越えて移動します。 また、動作は自律化されており、LEV自身の姿勢に基づき次の行動を判断し、 姿勢復元、観測データ取得、跳躍移動を自律的に実施するようにプログラミングされています。 LEVが取得したデータは、UHFおよびSバンドの通信により、母船であるSLIMを経由せずに直接地球へ送信されます。 また、同時にSLIMに搭載されるLEV-2のデータのリレーも行います。LEV-2もカメラと移動機能を搭載し、着陸地点周辺の画像を取得する機能があります。 LEVに関しては、下記のリンクも参照してください。
LEV-1は跳躍により移動します。ローバ後端に搭載されている跳躍脚をばねの力で押し出すことで、 地上で1m、月面だとさらに長距離の跳躍を実施するように設計されています。 跳躍ばねは、モータでリセットされるので、複数回の跳躍が可能です。
どちらの方向に移動するかは、ローバ前方に搭載された車輪で決定します。 姿勢の復帰も車輪でできます。
LEV-1はSLIM本体を経由せず、Sバンド帯を用いて観測データを月面から地球へ直接通信する能力を有します。 MINERVA, MINERVA-IIとの大きな違いの一つは直接通信能力で、独立してデータを送れることから、SLIM本体とは冗長系をなしています。 また、有志によるアマチュア無線帯(UHF)の送信器も有しており、430MHz帯の受信が可能であれば、誰でもデータの受信が可能です。 なお、基本的にコマンドはなく、LEVは地球からの制御を行わず、月面では完全に自律して活動します。ラジコンのように操縦することはできません。 LEV-2も同じく自律的に動作します。LEV-2は近接通信機能のみの搭載であり、LEV-1とのみ通信します。
2024/1/20 LEV-1のUHF帯電波は、和歌山大学の12mアンテナで無事受信されました。また、JAXAの局以外に、海外の有志らによってもU, S両方の電波受信が成功しています。 また、海外局でもLEVの電波受信がされていたようです。
JAXAイノベーションハブ事業により、タカラトミー、SONY、同志社大学らが製造した小型プローブです。 超小型の車輪展開式ロボットで、わずか250gととても小さく作られています。 こちらもラジコンではなく、自律的に動作します。 小型軽量なかわりに地球との直接通信能力は搭載されておらず、LEV-1を経由して情報を送信します。
着陸予定地点は、 緯度 -13.32° 経度 25.23°, 神酒の海にある直径約300mのクレータです。 ちょうど、うさぎの耳の付け根あたりにあります。 SLIMの着陸候補地点として選ばれたこのクレータはSHIOLIと名付けられています。 日本の探査の歴史に挟まる「栞」として、 道に迷わないための「枝折り」、 高精度ピンポイント着陸という世界の新たな月探査の歴史の端緒を成すマイルストーン(一里塚)で史緒里 などの意味を含めることができています。 なお、SHIORIではなくSHIOLIなのには深い理由があのです。 SHIOLI近傍にはクレータから飛散したボルダが多数位置しており、分光カメラによる観測対象になっています。 岩石の多い地形はローバにとっては移動の難しい環境であり、ホッピングによる移動能力が試されます。