研究TOPICS
みなさんは「グラフェン」という物質をご存知でしょうか?
これは、鉛筆の芯に使われる黒鉛やダイヤモンドなどと同じく、炭素原子が結合してできたもの。驚異的な薄さやダイヤモンド以上の強靭さ、伝導性に優れているといった特殊な性質を活かしてさまざまな製品開発に役立てられています。当研究室では、このグラフェンを用いて疾病の早期発見や環境モニタリングに活用できるナノデバイスの開発に取り組んでいます。わかりやすい応用事例として、「バイオセンサ」があります。これは、がんに代表される疾病を発見する検査デバイスに用いるもの。グラフェンを使った素子に血液や尿、唾液などを乗せると電流値が変化し、がん細胞や細菌物質を検出できる可能性があります。実現すれば、わざわざ病院で検診を受けなくても自宅で病気を未然に防ぐことができます。
グラフェンが注目を集めるようになったのは、この物質を開発した研究者がノーベル物理学賞を受賞した2010年のこと。こうした比較的新しい物質を用いて、今までこの世界になかったデバイスの開発に挑戦できるのがこの研究の面白さだと思います。この研究を通して、学生に身につけてほしいのは、ミクロとマクロの視点です。グラフェンの生成やデバイス作製といったミクロな実験結果を疾病の早期発見や環境問題の解決といったマクロな社会課題の解決につなげるプロセスを学んでほしいと思っています。
生体医用システム工学科は、電気電子工学、機械システム工学、物理システム工学といった分野が融合してできた学科です。多分野融合型の最先端の研究に興味がある人なら必ず夢中になれるテーマが見つかると思います。
グラフェンの分子構造模型
工学部
生体医用システム工学科
前橋 兼三 教授
大阪大学大学院工学研究科博士前期課程卒業。博士(工学)。大阪大学産業科学研究所助手、准教授を経て、2014年からbet36体育在线_bet36体育投注-官网网站@で指導にあたる。
Student's Voice
工学部物理システム工学科 4年
武末 栞奈さん
私立鴎友学園女子高校出身
グラフェンを用いた検査デバイスで血中のドーパミン濃度を測定し、パーキンソン病などの診断に役立てる研究に挑戦中です。卒業後は、大学院に進学して、バイオ系の知識をさらに深める予定です。
大学院工学府
物理システム工学専攻修士課程 1年
中西 竜大さん
愛知県立岡崎高校出身
大気中の汚染物質を測定するナノデバイスを開発しています。現在は二酸化窒素の検出にターゲットを絞っていて、いずれはこの小型デバイスで多様な物質を検出できるようにするのが今後の目標です。
大学院生物システム応用科学府
食料エネルギーシステム科学専攻 一貫性博士課程 3年
坂本 優莉さん
私立普連土学園高校出身
食品に付着した微生物をそれらが発する微量のガスで検知する検出原理の研究やセンサ開発に挑戦中。企業との共同研究やフィンランドへの研究留学を通じ、社会問題を視野に入れた研究を進めています。
※掲載内容は、2019年11月取材時のものです。