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活躍する卒業生

リラックス、美容など新しい価値を創造できる新商品を開発したい! アサヒグループホールディングス株式会社 R&Dセンター 発酵応用研究所 久住朝子さん 大学院 連合農学研究科 博士課程 2014年3月修了

在学中、アンコール遺跡群の劣化に関係する微生物を研究していた久住朝子さんは、現在、アサヒグループホールディングス株式会社で、カルピスブランドの飲料を基盤とした研究?開発を行っています。大学時代の経験がどのように仕事で活かされているのか聞きました。

農工大への入学~研究活動

緑が多いキャンパスに親しみを感じた

もともと自然に関するドキュメント番組などが好きで、高校時代から環境問題には興味がありました。そこで、この分野を専門的に学びたいと思い、農学部環境資源科学科に進学しました。農工大を選んだ理由は、東京といいながら、緑が多い農学部のキャンパスに親しみを感じたから。新潟県出身の私にとって、のどかな雰囲気は安心感がありましたね。

学生時代は、環境微生物学の分野の研究に取り組んでいました。これは、微生物が持つ力が環境にどのような影響を及ぼしているのかを研究する分野といえばいいでしょうか。なかでも私は遺跡の劣化に関係する微生物の研究をテーマにしていました。

世界遺産アンコール遺跡群での現地調査

研究の舞台となったのは、カンボジアの世界遺産、アンコール遺跡群。在学中に計5回の現地調査を行いました。現地では、風雨による浸食のほか、微生物が遺跡の表面に付着し、変色や劣化を引き起こしていることが報告されていました。そこで、私はアンコールワットをはじめとする遺跡を訪れ、微生物を採集し、分析。酸を出す微生物がどのくらいいるのか、遺跡の表面に生育する微生物にはどんな特徴があるのか……などを詳しく調べました。

博士課程修了までの5年以上に及ぶ研究で、私はふたつのものを得ました。ひとつは、微生物を扱うテクニカルなスキル。些細な環境の変化にも影響を受ける微生物を培養し、微生物の代謝物や遺伝子を分析する技術はバイオ系の研究職で幅広く役立つものだと思います。

ふたつめは、国内外で学会発表をして得た「自信」です。特に、オーストリアの国際学会で英語による研究発表を経験したことに刺激を受けました。遺跡や古い建造物の保存に関する研究は、主にヨーロッパで盛んに行われています。近い分野の研究発表を目にすることも多く、自分の研究テーマは海外でも注目度が高いことを感じました。ニッチな分野ではありますが、自分が世界で一番詳しい!と思える研究テーマを持ち、それを世界に向けて発信できたことで、大きな達成感を得ることができました。これこそ、理工系の学びならではの醍醐味だと思います。

就職活動~就職

「みんなを笑顔にしたい」を実現

就職活動は研究職に絞って行いました。微生物を扱う実験のノウハウを活かせる就職先を探し、食品系のメーカーを検討。そこで、「みんなを笑顔にしたい」という想いを実現できると感じたカルピス株式会社(現?アサヒグループホールディングス株式会社)を選びました。

アルバイトで健康の大切さを痛感

その背景には、学生時代のアルバイト経験がありました。内科診療所での仕事をしているとき、「健康に生きる」という当たり前だと思っていたことが、実はとっても貴重なことだと気づき、少しでもいいので、自分の知識やスキルを人の健康を支えるために役立てたいと考えました。
また、カルピスは飲料製品だけでなく、微生物を活用した飼料の研究開発を行い、抗生物質に頼らない家畜の健康維持や、飼料要求率の改善など、環境に貢献する事業に取り組んでいる点にも関心を持ちました。

現在の仕事

乳酸菌と酵母のよりよい組み合わせを検討

現在、私はアサヒグループホールディングス株式会社のR&Dセンター発酵応用研究所に所属し、カルピスブランドの飲料を基盤とした研究?開発を行っています。キーワードは「発酵」です。「カルピス」は原料となる生乳を脱脂し、乳酸菌と酵母で構成されている「カルピス菌」で発酵させることでできています。「カルピス菌」は、1919(大正8)年の発売以来、大切に受け継がれてきた唯一無二のものなんですよ。私は、この乳酸菌と酵母のさまざまな組み合わせを検討し、よりおいしくするにはどうしたらよいかを研究しています。

仕事では、1日ずっと実験?解析の作業をする日もあれば、報告書をつくることに集中する日もあります。学生時代は、自分で手を動かす作業中心でしたが、社会人になってからは、実験データを考察する作業をさらに重視していますね。

研究室での経験が役立っています

乳酸菌や酵母を培養し、実験を行う一連の作業は、農工大の研究室で培ってきた経験が活かされています。また、博士課程のときに、後輩たちにとって研究室が楽しい場所であってほしいと思い、雰囲気づくりに気を配った経験が、現在も職場でのコミュニケーションに役立っていると思います。

今後の目標、夢

発酵乳のリラックス効果に期待

発酵応用研究所での研究を通じて、乳酸菌と酵母でつくった発酵乳の香りには、リラックス効果、特に睡眠にいい影響がある可能性があることがわかってきました。そこで今後、発酵乳の香りの睡眠改善効果をテーマにした学会発表にも挑戦する予定です。

「カルピス菌」は、リラックス、睡眠改善、美容など、さまざまな分野で人々の健康を支えていく可能性を秘めています。今後、新たな分野のニーズに応える新商品も開発されるかもしれません。
新しいおいしさ、新しい価値を提供できる新商品を誕生させるのが目標です!

※掲載内容は、2015年10月取材時のものです。